目次

  1. 経費で落とすとは?個人事業主と法人の違い
  2. 経費で落ちるもの一覧
    1. 交際費
    2. 保険料
    3. 役員報酬
    4. 福利厚生費
    5. 租税公課
    6. 地代家賃
    7. 諸会費
    8. 修繕費
  3. 経費で落とせないもの一覧
    1. 個人の食費や生活費
    2. 要件を満たさない家族への給与
    3. 30万円を超える資産
  4. 経費で落とすメリット・デメリット
    1. 経費で落とすメリット
    2. 経費で落とすデメリット
  5. 経費で落とすときの注意点
    1. 領収書などを7年(または10年)保存する
    2. 事業との関連性を説明できるようにする
    3. 社内のルールを明確にする
  6. 経費で落とすときは適切に

 経費で落とすとは、税金の計算上、収入(益金)から差し引ける費用(損金)を計上することを言います。経費で落とした金額だけ課税所得額が減るため、節税につながるメリットがあります。

 そもそも「経費」とは、事業に関わるお金のことです。この定義は、個人事業主でも法人でも同じです。しかしながら、個人事業主の場合は、個人の生活との線引きが難しく、経費のなかに「生活のための費用」である「家事費」が含まれると考えられがちです。そのため、経費を計上する際は、経費が事業に直接に関わっていることを説明できるようにする必要があります。

 また、会社の損益計算上は費用として計上できても、経費で落とす(損金)ことができないケースもあります。

 経費で落ちるものについて一覧で紹介します。

勘定科目
交際費 取引先との会食
通信費 オフィスのインターネット通信費、社用携帯の通信契約費
保険料 事業用の損害保険料
水道光熱費 オフィスの電気代、ガス代、水道料
旅費交通費 電車、バス等の公共交通機関の乗車費、ガソリン代
給料賃金 従業員、アルバイトへの給与
役員報酬 役員への給与、賞与
法定福利費 健康保険料、厚生年金、雇用保険の雇用主負担分
福利厚生費 従業員のための福利厚生プランにかかる費用、従業員への慶弔金
消耗品費 事業で使用する文房具や少額のパソコン関連機器
租税公課 事業税、印紙代、行政の証明書
広告宣伝費 取引先に配布するノベルティ、テレビCM
地代家賃 事業所の家賃
諸会費 事業として加入している団体の年会
修繕費 事業用資産を修理(現状維持)したときの費用
賃借料 事業用複合機のレンタル料
業務委託料 外注先への委託費

 一覧で紹介したもののうち、経費で落とすときに注意が必要なものを解説します。

 経費で落とせる交際費とは、得意先や仕入れ先といった「事業に関連する相手先」に接待などを行うときの費用が該当します。

 交際費は事業を行ううえで必要な経費ではありますが、過度に使われることも多いため、法人の場合は、経費として認められる範囲が決まっています。具体的には飲食費のうち50%まで、資本金1億円以下の法人であれば飲食費のうち50%までか合計800万円まで選択することができるといった定めがあります。この範囲を超えてしまうと、経費で落とすことはできません。

 一方、個人の場合は年間800万円まで、といった制約はありません。しかし、収入の獲得に必要なものであると証明できないと、私的なものとして扱われてしまいます。私的なものとして扱われると経費として認められないため、注意してください。

 経費で落とせる保険料は、事業上のリスクに対して加入する保険が該当します。例えば、火災保険料や地震保険料、従業員の傷害保険料などの「損害保険」です。また、社長のように事業上の重要人物に対する保険も、経費で落とせるケースがあります。

 ただし、積立型で解約返戻金があるような保険の場合、支払った保険金の一部しか経費として落とせません。残額分は、保険積立金として資産で計上することになります。

 役員報酬は役員への毎月の給与にあたるため、経費になります。しかし、役員は決算の状況を見て報酬を簡単に増減できる立場であるため、毎月同額の報酬を払わないと経費で落とすことはできません。

 また、賞与を支払う際にも、一定の時期までに事前に税務署に届出をして支払わないといけない、などの決まりがあります。

 従業員が働きやすい職場環境にするために会社が用意する福利厚生費は、経費で落とすことができます。例えば、住宅手当や食事補助、社員旅行などが該当します。

 しかし、福利厚生費を経費で計上するためには、経理規定で定めるなど、文書化しておく必要があります。また、基本的には全社員が享受できるような制度設計になっていないと、福利厚生費として認められません。

 一部の従業員にのみしか認められない福利厚生の場合は、支払った従業員の給料として扱われます。

 租税公課は、印紙や事業税の支払、行政サービスの手数料などが該当します。これらは、経費として落とすことが可能です。

 租税公課と似たような項目として「法人税、住民税及び事業税」があります。これは利益に対して課される税金で、経費として落とすことはできません。

 また、個人事業主が支払う所得税や住民税も同じように、経費では落とせません。

 地代家賃は、本社や事業所を借りる際に支払うものであれば、経費で落とすことができます。

 そのほか、従業員の社宅も福利厚生の一環で用意することが可能です。役員の居住用に関しても、一定の計算式のもと、役員から家賃を収受することにより、経費で落とせるようになります。

 諸会費とは、業務に関係する同業者団体や商工会議所、自治会、法人会などの団体に支払った会費が該当します。法人として加入する業界団体に対して支払う費用は、経費で落とすことができます。

 一方、取締役が人材交流を兼ねて加入する青年会議所やライオンズクラブの会費といったものは、加入先が奉仕団体という性格をもつため、法人の諸会費として認められません。この場合は、役員への報酬として扱われます。

 修繕費は、事業用に使用している資産を修理したときの費用です。通常の業務に使っている資産を現状維持するためにかかった費用であれば、経費で落とすことは可能です。

 ただし、資産の機能がアップした場合は、修繕費ではなく、資産を新たに取得したとして処理を行います。例えば、建物に対しておこなう耐震工事や増築などが該当します。この場合は、減価償却を通じて複数年で経費で落とすことになります。

 経費で落とせないものを一覧で紹介します。

経費で落とせないもの一覧
・個人の食費、生活費
・要件を満たさない家族への給与
・30万円を超える資産

 個人の食費、生活費は、給与から支払うものであり、事業との関連性はありません。個人事業主の場合は、事業で稼いだ所得から食費や生活費を賄う必要があります。そのため、個人の食費、生活費を経費で落とすことはできません。

 法人の場合は、個人の食費、生活費を負担すると、従業員への給与と認定され、従業員の所得税が増加することになります。

 個人事業主の場合、一緒に生活している家族に対して給与を払っても、家族内でお金を融通しあっているだけになります。そのため、生計を共にしている家族へ給与を支払っても、経費として計上することはできません。

 ただし、青色申告の届出を出している場合は、事前に税務署に届出を出していれば、その範囲内でのみ経費で落とすことができます。

 中小企業、個人事業主では、30万円の資産までは購入時に一括で経費にできます(年間300万円までの制限あり)。30万円を超える資産の場合は、一括で経費にすることはできず、減価償却費を通じて経費になります。つまり、複数年度で経費で落としていくことになります。

 経費で落とす場合のメリット・デメリットを紹介します。

 税金(法人税、所得税など)が減ります。事業のために適切に利用した経費であれば、それをしっかりと計上して、税金計算することで、余計な税金を支払わなくて済みます。

 また、適切に経費にすることで事業で必要な経費額が判明するため、将来の事業計画を立てやすくなります。

 事業で使った費用は、しっかり経費で落とした方が良いでしょう。

 経費で落とすには、領収書などの資料を税法で定められた方法で保管を行う必要があります。つまり、手間や保管スペース(電子の場合はストレージ)が必要です。

 また、「経費で落とす」=「お金を使う」ということでもあります。無駄な経費は使わずに税金を納めた方が、最終的に事業で使えるお金は増えているということが多くあります。

 あまり税金を意識しすぎて、経費を使いすぎてしまうのもよくありません。

 経費で落とすときの注意点を紹介します。

経費で落とすときの注意点
・領収書などを7年(または10年)保存する
・事業との関連性を説明できるようにする
・社内のルールを明確にする

 注意点を守らないと税務調査になったときに損金として認められず、過少申告として追加で税金を納めることになります。

 経費で落とすには、領収書など経費に関する根拠資料を税法で定められた期間、保存する必要があります。保存する期間は、7年、または過去に赤字決算をしている場合で、繰越欠損金の控除を使う場合は、10年の保存が必要です。

 保存期間は長期間にわたるため、保存スペースの確保が必要になります。

 経費で落とすには、税務署などの第三者に問われたときに、事業との関連性を説明できないといけません。例えば、交際費で取引先と会食をしたときの領収書には、誰と会食をして、どういった話をしたかを領収書にメモ書きするなどしておきましょう。

 手間がかかりますが、税務調査などの際に説明する必要があるため、事業との関連性を説明できるように記録しておくのが得策です。

 経費は、実際に経費を使った従業員からの申請書などで精算を行うことが多いと思います。その際、しっかりとルールを作成しておかないと、私用のもののように実際に経費で落とせないものまで申請をしてくるケースがあります。

 マニュアルやQ&Aを作成して、従業員が経理にいちいち聞かなくても済むような体制を整える必要があります。

 経費で落とすには、さまざまな条件があることを解説してきました。

 経費を計上する際は、適切に実施をしないと税務調査などで認められなくなり、追加の税金が発生します。すでにお金を使ったあとに追加の税金でさらにお金を支払ってしまうと、運転資金が少なくなってしまい、事業継続が困難になる可能性もあります。

 経費で落とすときは、税法に基づいて適切に処理をするように心がけてください。